新田ノルザフリザ、石井智紘、佐藤義浩、藤原英道
概要
金属ナノ粒子はナノサイズ効果によりバルク材料に比べて融点が降下する特徴を示すことが知られている。そのため,近年,金,銀や銅の金属ナノ粒子を利用することで比較的低温で焼結が可能となり,プリンタブルエレクトロニクス分野の導電材料として注目されてきた。本研究は,コスト面で有利な銅ナノ粒子を用い,溶媒として代表的なポリオールを使用し,銅ナノ粒子の酸化状態とポリオールの分解が銅ナノ粒子の焼結挙動に及ぼす影響について検討した。銅ナノ粒子の酸化度が低い場合は,ポリオールの分解生成物の特徴としてケトン類が確認され,ケトン類は還元力が弱く,銅ナノ粒子の焼結への影響が低いと確認された。しかし,酸化度が高い場合は,分解生成物にカルボン酸類が確認され,カルボン酸はリーチング効果を持つと同時に分解が進む過程で酸化銅を還元させ,銅ナノ粒子の焼結への影響が高いと確認できた。このように銅ナノ粒子の酸化の最適化とポリオールとの相互作用で粒子の成長が促進されて電気抵抗率が改善され,得られた焼結膜に割れが低減したことも認められた。粒子の酸化度は今後の銅ナノ粒子の開発を進める上で重要な指針になると考えられる。
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